「ヌワラエリア オーナー 前田勝利さん」 第5回

『僕がいいなと思う、作家』

"節操なく"買い集め、現在進行形で耕している前田さんの本棚。こんな古本屋さんがあったら通いたくなる。

前田:絵と同じで、昔、小林秀雄を読みあさったことがあるんですよ。でもやっぱり訳がわからないんですね。「無常ということ」という本をいつも持ち歩いて、もう何回読んだかな、それでもわからない。要するに、かちっとこういうことだというよりは、抽象画のように何かぼやっとした感じなんです。でも、ある日突然、ああいいなあと思うようになった。

大井:ずいぶんたくさん本を持っていらっしゃるんでしょうね。

前田:僕の机のまわりは、雑誌やいろんなものがどんと来て通れないんですよ(笑)。床が抜けるって、みんなに言われます。それでこの間、トラック2台くらい雑誌類を捨てました。「住宅建築」とか「家庭画報」とか「新建築」の古いやつも全部。家にもまだけっこうあるんで、今度の古本市にも出しますよ(笑)。

大井:古本屋さんをやってほしいな。そういう店があったら通いますよ。

前田:そうですねえ、でも売りたくないなあ(笑)。今、店の2階にある本なんていうのは、わりとマニアックに集めたものなんですよ。僕は谷沢永一をね、ほとんど買っています。最初は、新聞か何かに書いてあった書評に衝撃を受けたんです。それでずっと追いかけていたら、その前から開高健も買っていましたけど、当時彼らは同じ年齢で、谷沢の家に開高が遊びに行くんです。そして本を借りて、夜中まで話す。当時、大阪の同人誌に「えんぴつ」というのがあったみたい。その中では作品を片っ端からけなすの、最後はイヤになってやめたらしい。それを聞いた若い頃の藤本義一が、戦艦大和が沈没したようなそういう心境になったと何かに書いていたのを読んだことがありました。

ヌワラエリア オーナー 前田勝利さん

 谷沢永一の「紙つぶて」を友人に貸してあげたら、書評だと思って軽い気持ちで読み始めたら、あの本はとんでもない本だと言っていました。文庫本とハードカバーとあるんですが、この間、人にあげようと思って探したら絶版になってました。それが谷沢栄一との出会いです。あ、こんな生き方があるんだと思って。だから吉行淳之介の文章なんかも、なんでこんないい文章が書けるんやろと。技を全然出さない、それでも上手いんですよね。いかにも書いてますという匂いがしないんですよ。

大井:それにしてもいろんな本がありますね。

前田:とりあえず節操なく買ってるんでね。

大井:かなり、私の好みに近いです。

(つづく)

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