「ギャラリー・モリタ オーナー 森田俊一郎さん」 第3回

「絵と自分の間に生まれるもの」

 夢を追いかけ、自分の道を歩んでいく。そんな人々が増えることで、街は活気づいていくはず。だからこそ、オリジナルな自分だけのブランドを作っているオーナー達の「物語」を伺うことは、きっと大きな意味があるはずと大井さん。そこには、“共鳴する人たちを自力で引っ張り込む”チカラがある。

森田:自分というものを信じられないから、いわゆるメジャーなブランドに頼っちゃうわけでしょ。うちに来る若い人達には、一目でブランド物とわかる格好をしている人っていないんですよ。こんな服着てるって子が、実はたくさんの絵を持っているなんてね。自己の内面を磨き、自分の人生をいかに美しく生きようかって考える人たちとって、外的に繕うことはそれ程重要でない気がする。そういう子たちと、ここで対話しているから、たまに天神なんかに行くと妙なギャップを感じる。まだ若いのに化粧に頼って、自分でない誰かを演じちゃっているような。もっと内面を磨いて、自分を作っていくということに目を向けてほしい。

 アートだって、結局そう。絵が物語るのではなくて、絵と自分との間に「物語」が生まれるんですよ。でもその「物語」というのは、絵が語るわけじゃないから、自分の内面が変化するたびに、たくさんのストーリーが生まれていくわけ。でも多くの人にとって内発するイメージが少ないから、一方通行で完結するテレビに頼るしかない。テレビを見ることって受動的なんです。絵を見ることは能動的な自分が必要なんです。だから自分が成長すればする程楽しめる。だから、絵を通して自分の内面を輝かせて欲しいですね。

大井:それと、自分で作る「物語」が大事なんだよって言ってくれる人が、まわりにいないというのも大きいです。

森田:結局、アートというのは人と違うというところから生まれるもの。でも現代社会の中では、人と違うことが尊重されるどころか、恐怖心さえ与えちゃうような風潮じゃない。それって、社会が病んでいるということ。

大井:「勝ち組、負け組」という言葉が主流になるくらいですからね。そういうことについて書かれている本を読んでみると、やはりどう考えても今後ますます格差社会になっていくと思えます。でも大切なのは、上にいくことばかりを目指すのではなく、自分のいる環境のなかで、どうやって毎日を充実させていけるかどうか。そういう価値観もあるんだよということを、みんなで認識していかないと、これからも自殺はどんどん増えていくでしょう。  その点、アートなんかは、とてもいいと思うんです。アートは心を豊かにするもの、収入だとか社会的地位などを超えた精神的なものだから。100%競争社会だったら、負けたらそこで終わりですが、文化やアートにもっと意味を見出すような社会になればいいですね。成熟していけば、どこかでアメリカ型の社会は行き詰まるしかないわけですし。

森田:やはり、アメリカ的なものがあまりにも入りすぎちゃいましたね、この国は。今、斉藤徹さんと一緒に活動してきたミュージシャンのミシェル・ドネダ氏は、故郷のフランスに帰ってマクドナルドかケンタッキーの店の前で、子供達といっしょに楽器でガチャガチャ邪魔をしているらしい。日本で当たり前のように受け入れられるものが、自分たちのオリジナリティがしっかりしている国では、私たち日本人が気にならなくなってしまったものでさえ苛立っちゃうわけです。

 人と違うことが怖くて、すぐに誰かと足並み揃えてしまう。けれど、人と比べ、自分を制限するところからは何も生まれないのだ。だから、もっと自分に自信を持って、見つめてあげよう。  (つづく)

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