「ギャラリー・モリタ オーナー 森田俊一郎さん」 第2回

「自分の夢、共有の価値観」

 自分の感性と責任であらゆるものごとに向かいあい、そのなかで生まれる自身の「物語」をつむいでいく、それが自分が自分として生きてる証であり、喜びなのだとふたりは話しはじめた。

大井:キーワードは、「物語」じゃないかなと思うんです。結局、若い人たちのひきこもりや自殺が増えているというのも、自分の物語を作れない人たち、自分が生きている意味がまったく感じられない、「物語」というものに無意識な人たちが増えてきているからだと思います。本当は、人それぞれに小さいながらもストーリーがあるのに、それに目を向けられない。

森田:そう、「物語」ですよ。自分の中で「物語」を作っていかないと。今、若者たちがネットを通じて集団自殺とかするでしょ。それは社会が苦しいのではなくて、夢を持てないから、「物語」が作れないからだと思う。 

 結局、惰性的な毎日に決別し、新たな世界に踏み出す勇気もない。人との交流もうまくいかない。だから、ひきこもる。だけどね、たった一人でも自分のことをわかってくれる人がいるだけで、どんなに勇気づけられるか。価値観を共有することは重要です。画廊という空間は「作品」という強烈な価値観を発している。その価値観を同じくする人が訪れるわけです。共有する価値観を持つからこそ、同じ夢を見ることができる。そんな人たちが画廊の大きなテーブルを囲んで語り合うんです。 ギャラリー・モリタ オーナー 森田俊一郎さん  つい最近も、うちに九州大学の男子学生が来たんだけど、親や先生が望むようになったものの自分の夢を持てないわけですよ。そんな時、ここでイスラエルから来た舞踏団と出会ったんです。そして「踊る」という行為が彼にとって「生きている」というリアリティをはっきりと感じさせたんだと思う。それから彼は、大学を休学して3ヶ月間バイトをして、今年の一月にイスラエルまで行っちゃった。ストイックに頑張って、今度イギリス公演に出るらしいです。もし、そういう子に自殺しろって言ってもナンセンスでしょう。だから、今、みんな画一化されて、何かにあてはめられてるけれど恐ろしいことだよね。僕らの世代も画一化されてきたところがあるけど、自分の価値観を持って生きている大人がまわりにいるだけで、随分と違うと思うな。  (つづく)

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