「ギャラリー・モリタ オーナー 森田俊一郎さん」 第1回

 「物語のあるお店」のスタートにあたって、まず初めに訪れたのは、今年16年目を迎えるけやき通りの「ギャラリー・モリタ」。オーナーの森田俊一郎さんに、日常におけるアートの存在についてお話を伺った。     森田さんのセレクトによって様々な作家を紹介しているが、なかでもおすすめの作家を紹介してもらう。  (構成・文/小坂章子)

「直にふれて、感じること」

森田:誰が一番とは言えませんが、小林健二さんなんかは、すでに歴史上重要な位置にいるんじゃないですか。今の美術界を見ても、「アート」と「科学」という観点でやれるのは、彼しかいない。そう言い切れるところがスゴイことなんだと思います。赤坂の「ヌワラエリア」にも、彼の作品が飾られています。

ギャラリー・モリタ オーナー 森田俊一郎さん

 美術の世界で問題なのは、美術に関わる人と、一般に流布される情報のギャップが余りにも大きいことです。いわさきちひろ展に訪れる人の多さに比べて、現代美術になると、その何分の一さえも来ない。いわさきちひろ展を本当にやりたいと思っている学芸員なんているのかな。僕は、自分の感じた直感や真実に従うのがアートだと思っているから、自分が思うベクトルに進んでいきたいですね。

大井:日本でアートが立ち後れたのは、国が経済に力をいれすぎた反動でしょうね。

森田:百年前のヨーロッパ、特に世紀末ウィーンの精神が参考になります。その時、彼らが見出した答えが、「芸術」だった。当時、ヨーロッパでは産業革命後、経済優先できたわけだけど、人々の心は病んでしまった。そういう人々の目を、芸術や自分の内面に向かわせることによって、夢や希望を与えるという取り組みがあった。つまり、芸術が社会に新しい生命を吹き込めると考えたんです。今の日本の場合、そういう方向に持っていこうにも政治家や官僚にそういうセンスがあるのだろうか。

 もっと同時代を生きる作家に目を向けようと、森田さんは熱を込めて話してくれた。

森田:生身の作家とそれを見る人々の間でドラマを作らなきゃ。アメリカでもヨーロッパでも絵画というものの需要の8割ぐらいは、今を生きている作家だと聞きます。日本では絵を買う側もアートをアートとして接しているわけじゃない気がする。アートとインテリアの違いも明確でない気がします。家具に調和するなんて感覚よりも、まわりの風景を一新するぐらいの迫力をアートに求めたい。ピカソやマチスも最初から有名だったわけではなくて、ヨーロッパの人々が育てていったんです。だからうちでは、スペインだろうが東京だろうが、必ず作家にここに来ていただき、生身のアーティストにふれてもらう機会を作るようにしています。その存在によって揺さぶり、揺さぶられたい。やっぱり、それを強調していきたいんです。

 同じ空間で同じ時間を過ごし、自分のカラダで体験して、実感する。人の評価に頼った感想ではなく、自分自身、感じること、気づくこと。それを大切にしていきたいと森田さんは考えている。  (つづく)

「ギャラリー・モリタ」の紹介 1991年福岡市中央区けやき通りに誕生。西洋でも東洋でもなく、伝統でも現代でもない、ジャンルというカテゴリーをも飛び越え、ただ現代を生き抜く生身のアーティストたちの自由な表現の可能性を紹介する刺激的で創造的な展開がうまれる空間。画廊という枠を超え、日常におけるアートやアーティストの可能性を広げていく活動は、絵、音楽、インテリアなど多岐にわたる。

ギャラリー・モリタ ホームページ http://www.g-morita.com/html/top.html

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